本読みライフ

読書ブログをやろうと思って気づいたら迷走している。

小砂川チト「家庭用安心坑夫」を読んでーー自分には理解不能だった主人公の狂気

読了予測:2分10秒

僕はだいたい、小説だと文学、日本だと純文学と呼ばれる分野に興味があるというか、逆にそれ以外の小説にアレルギーがあるというか、読めない感じなので、毎年(2回の)芥川賞は常にチェックしています。で、普通は受賞作を読むのですが、平野啓一郎さんの大ファンでして、今現在選考委員をされているので、近年は、平野さんが推した作品を読むことが多いです。

結論から言うと、特に…、という感じだったし、理解不能

自己分析すると、僕は純文学が好きな割に、理解できる作品がこれまでも少なく、目下、修行中です(汗)。

しかし、逆に言うとそこが面白いところでもあって、ははーん、なるほどね、ここで伏線がこうなって、ラストがこうなるので謎が解けたわ、みたいなのには興味がないわけですね。

あらすじのようなもの

この小説は、主人公が東京(だったかな?)のとある場所に、そこに本来あるはずのない「けろけろけろっぴのシール」が貼られていることに端を発します。

そのシールは、主人公の実家の秋田県(だったかな?)のタンスか何かに貼られているものにそっくりというかそのものに違いない(と主人公が思った)からです。

まぁ、びっくりはするだろうけど、そこからの考察というか思弁というか、次々と起こる似たような本来起こるはずのない出来事の数々でちょっとこの主人公おかしすぎ?と思っちゃうわけです。

文学的な匂いのするところ

この主人公、一応、お買い物代行というパートのような仕事はしているものの、ほぼほぼ専業主婦に近いというか、どう見ても仕事が好きではなさそうだし、適正があるとも思えない。

ニート気質させ漂わせています。そういうところには少なからず共感しましたし、僕は文学とはマイノリティを描く一面が大いにあると思っているので、かなり狂った主人公、働くことが好きそうでないというのは、大きなプラスポイントではありました。

まとめ(のようなもの)

とは言え、なぜタイトルが「家庭用安心坑夫」なのか?まぁ、坑夫は出ては来るんですが、いまいちわからなかったし、炭鉱のテーマパークを中心としたお話も、うーん、マイナーだなぁと思ったし、全体的に僕には刺さりませんでした。

この主人公の狂気みたいなものは、もしかしたらその母親(昔クライミングで頭をぶつけておかしくなった)から来ている遺伝かもしれないし、炭鉱事故で亡くなった父親の不在から来ているのかも知れない。

しかしいずれにしろ、僕にとってはとうてい納得の行くものではありませんでした。

最後に、書評家の豊崎由美さんのYouTubeと、選考委員の選評のリンクを貼っておきます。

豊崎由美 発表直前!第167回芥川賞大予想! - YouTube

芥川賞-選評の概要-第167回|芥川賞のすべて・のようなもの

そう言えば作者の小砂川チトさんのこと

ああ、思い出したんですが、この著者の方は芥川賞初ノミネートで、直前に群像新人文学賞を受賞されてるんですね。

僕はいつも文芸誌の方で読むので、選考委員の選評なども読んでみたのですが、それはまぁどうでもよくて、著者の略歴というか、この方、「岩手県盛岡市出身。慶應義塾大学文学部、同大学院心理学専攻修了、心理士。」だそうです。

心理士って言われても、臨床心理士なのか認定心理士なのかよくわかりませんが、とにかく、文学部出身であり、かつ心理学専攻というのは、著者の作風に幾分というかかなり影響を与えているかも知れませんね。

おまけ(新しく獲得した語彙一覧)

瑞雲(ずいうん)・・・めでたいことの起こるきざしとして現れる雲。祥雲。

睫毛(まつげ)・・・読み方に自信がなかったので調べたらやっぱりまつげ。

突沸(とっぷつ)・・・液体が沸点に達しても沸騰せず、さらに加熱を続けると沸点より高い温度で突然激しく沸騰する現象。

斟酌(しんしゃく)・・・読み方に自信がなかった。やっぱりしんしゃくだった。

三和土(たたき)・・・コンクリートで仕上げた土間。古くは、叩き土に石灰・水などを加えて塗り、たたき固めた。

退って(しさって、すさって)・・・読みがわからなかった。退る(しさる、すさる)という動詞があるらしい。

桟(えつり)・・・「さん」ではないと思われる。かや葺き・わら葺き屋根や土蔵の壁の下地材。ヨシや細い竹・板を縄で簀のように編んだもの。

切羽(きりは)・・・トンネル工事、鉱石の採掘現場などで、掘り進めている坑道の先端。切場。